眼瞼下垂の手術・治療と言っても、実際には挙筋前転法や挙筋短縮法、筋膜移植のように複数の治療法・術式があります。どの術式が望ましいのかというのは、今のあなたの瞼の状態や瞼の筋力、あなたが希望する仕上がりの形状や二重の幅によって違いますので適切な治療法を選択ことが重要です。
また、仕上がりの形状によっては眼瞼下垂の手術だけでなく、目頭切開や目尻切開など複合的な治療が必要となることもありますのでしっかりとした下準備が大切です。
ここでは最先端の眼瞼下垂の手術「挙筋前転法」についてご紹介しましょう。
きょきんぜんてんほう
挙筋前転法
挙筋前転法は、瞼を持ち上げる筋肉の動きを調整し、目を大きく(目の縦幅)変えたり、開けづらい目を開けやすくすることで、見た目の美しさを追求したり、機能面での回復・修復をする瞼の整形手術のことです。
挙筋前転法は眼瞼下垂となっている根本的な原因を生理的に改善できる何よりお勧めの治療法なんです。
眼瞼下垂の代表的な手術としてこれまで眼科などでは挙筋短縮法(タッキング法)が主に行われてきました。挙筋短縮法は、瞼を持ち上げる筋肉そのもの(挙筋腱膜やミューラー筋など)を切ったり、折りたたんで短くすることによって目の開きを改善する方法です。筋肉を直接操作するため瞼はしっかりと持ち上がり、眼瞼下垂の手術としては非常に有効とされてきました。しかし、瞼の筋肉は交感神経に大きく関与していることから、筋肉そのものにダメージを与えてしまう挙筋短縮法は、体に対し何かしらの影響を与えるリスクとなってしまいます。
そこで考案されたのが挙筋前転法です。
挙筋前転法は眼窩隔膜、挙筋腱膜を操作することで瞼の持ち上がりを改善できることから、眼瞼挙筋にダメージを与えることなく、生理的に改善させることができるんです。
挙筋前転法
どうして目がしっかりと開くようになるのか。挙筋前転法の治療原理についてご案内します。
まず始めに、「どうして目が開けにくくなるのか」ということを知っておきましょう。
瞼の中の構造ですが、①瞼を持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)、②ミューラー筋・挙筋腱膜の複合体、③瞼板が連結しています。
目を開けるというのは、瞼の中の瞼板を持ち上げるということ。
目を開けようとすると、まず始めに眼瞼挙筋が収縮します。そうするとミューラー筋・挙筋腱膜の複合体を通して瞼板が持ち上げられ、目が開くんです。
目が開けづらい状態というのは、挙筋腱膜・ミューラー筋複合体と瞼板との接続が緩んでいる状態なので、筋肉がしっかりと収縮して持ち上げようとしても、瞼板との接続に遊びがあるためパッチリと目を開けることができないんです。
挙筋前転法は、眼窩隔膜を前転させて瞼板に固定する技術のことです。
ミューラー筋・挙筋腱膜とも違う眼窩隔膜? えっ、なにそれ?と思われるでしょう。当然ですよね。
眼窩隔膜というのは、眼窩脂肪を覆っている薄い膜のこと。実はその眼窩隔膜と、ミューラー筋、挙筋腱膜はそれぞれ別の組織なんですが、しっかりと密接してくっついている状態なんです。そのため眼窩隔膜を引き出して瞼板に固定すれば、おのずとミューラー筋・挙筋腱膜も同時に固定することができるんです。
挙筋前転法の手術で操作するのは眼窩隔膜だけ、自律神経に影響するミューラー筋・挙筋腱膜には一切触れることなく、瞼板に固定することができるとっても優れた治療技術なんです。
挙筋前転法手術の手順
実際の手術で行われている挙筋前転法の内容をご紹介しましょう。
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デザイン
瞼を切開するライン、切除する皮膚の量・大きさを決定し、まぶたに直接描いていきます。このデザインで傷の位置、二重まぶたの折り返し位置が決まりますので医師は丁寧に細かく描きます。
One point:デザインマーカーの先は少し細いのでチクチクした感じが出てしまう場合があります。 -
局所麻酔
まぶた全体に麻酔の注射を打っていきます。挙筋前転法で痛いというのはこの麻酔です。麻酔が浸透し効果が現れると痛みを感じることはありません。
One point:麻酔の痛みを止めることはできません。静脈麻酔など眠った状態での手術も不可能ではありませんが、眼瞼下垂の手術の場合、明確な意識の下で手術しないと目の形状や二重まぶたの幅などの調整が難しいのでお勧めはしません。 -
皮膚の切開・切除
デザインで描いた部分を切開していきます。皮膚にたるみや余分な皮膚が出てしまう場合は皮膚を切除します。
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眼窩隔膜の露出
皮膚を切開すると次に出てくるのは眼窩脂肪を覆っている眼窩隔膜です。眼窩隔膜を丁寧に露出させます。挙筋前転法はこの眼窩隔膜を瞼板に固定する手術ですので、丁寧に適正範囲を露出させます。
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眼窩隔膜を前転固定
露出させた眼窩隔膜に切開を加え、睫毛側の断片を少し引き出して前転させ、眼窩隔膜と瞼板を3点で仮固定します。
One point:眼瞼下垂の状態というのは寄れてしまったシーツと同じ状態です。軽く引き出して瞼板に固定することでシーツの寄れを取るのと同じような感じでピンっと張った状態に整うため目がしっかりと開くようになるんです。 -
微調整
瞼の開き具合、目の形状、黒目の露出具合、左右差など細かく丁寧に確認し、調整します。
One point:寝ている状態だけではなく座った状態でも確認することが多いです。その際に鏡で黒目の露出具合を確認することができるクリニックもありますので、そこまで対応してくれるクリニックがお勧めです。 -
皮膚の縫合
出血の状態をチェックし、十分止血できていることを確認して皮膚を縫合し、挙筋前転法の手術を終了します。
ここでご紹介する内容はあくまで標準的な方法です。個々で横走靭帯の解除や、瞼板前組織の切除、眼窩脂肪の除去など細かな術式が加わります。
挙筋前転法のメリットとデメリット
挙筋前転法には外科手術ですのでメリット、デメリットがあります。しかしデメリットがあるからといって、過度の心配は不要です。デメリット以上に得られるメリットの方が遥かに上回っていることは十分理解しておきましょう。
メリット
自律神経に関与している筋肉に一切ダメージや刺激を加えることなく、筋肉と瞼板との緩みをピンっと張ったように改善できるので開けにくかった目を自然にスムーズに開けられるようになる。
将来的に再び眼瞼挙筋と瞼板との間に緩みができてしまっても同じ手法で再度緩みを改善できる。
黒目の露出が増えるだけでなく、目が開きやすくなることでおでこのしわが消えたり、薄くなったりします。そのため見た目の年齢を大きく下げることができます。
また、瞼の余分な皮膚も切除できるので目元も若返ります。
眼瞼下垂の状態だと、前頭筋が過緊張の状態なので偏頭痛や肩こりを起こしますが、挙筋前転法の術後はそれらの症状が大きく改善します。
また、さまざまな機能が回復し全身状態や自律神経も改善し心が豊かになります。
デメリット
基本的には保険外で治療することが多いです。そのため自費による治療となるので費用が高額になってしまいます。
眼瞼下垂の手術というのは0.1ミリの違いで大きな違いを生じる可能性が高い治療です。また、瞼の厚みや眼窩脂肪、ROOFと言った組織も大きく関わってきますので医師の経験や技術の差で仕上がりには大きな違いが出てしまいます。
瞼の手術の中でも筋肉を操作するということから普通の二重まぶたの手術よりもさらに強い腫れを生じやすいのが眼瞼下垂の手術です。そのため一定期間のダウンタイムが必要となります。
皮膚を切開するため傷跡は必ず残ります。しかし、決して目立つものではありません。もちろん体質や医師の技術によっても違いますが。
挙筋前転法で得られる効果
眼瞼下垂の治療「挙筋前転法」の効果は瞼の開きが劇的に改善するだけではありません。これまで瞼を持ち上げる筋肉の過緊張によって生じてきた偏頭痛や肩こりなどさまざまな自覚症状を改善できるのも挙筋前転法なのです。
- 目を大きくする
- たるみを引き上げる
- 二重まぶたになる
- 目の奥の痛みの改善
- 黒目を大きくみせる
- 目力アップ
- 偏頭痛の改善
- 眼精疲労の改善
- 瞼の開きを改善
- 見た目の若返り
- 慢性的な肩こりの改善
- 不定愁訴の解消 など
このように挙筋前転法の効果はさまざま。若返ったり、キレイになるだけではないので非常にお勧めの治療法です。
挙筋前転法のリスク
挙筋前転法のリスクについてご紹介します。
一時的(短期間)なリスク
数日、数週間で落ち着く、消失するリスク
腫れ・内出血
腫れや内出血というのはほぼ全ての方に生じる問題です。腫れについては1、2週間、内出血については4、5日程度で消失しますので心配は不要です。
左右差
挙筋前転法の術後の左右差は腫れや瞼を開ける癖の影響によって一時的に引き起こされるリスクです。2週間以降まで改善しない左右差については修正が必要な場合もありますので主治医に相談しましょう。
不自然な状態
不自然な仕上がりと言っても状態によって違います。眼瞼下垂の手術の場合、新たに二重まぶたを作りますので、皮膚の折り返し部分に癖がつくまでに一定の時間がかかります。そのため仕上がりが不自然な状態が数週間持続することがあります。
また、過矯正による不自然な瞼の場合は放置しておいても自然になることはありませんので修正手術が必要になることがあります。
傷跡
傷跡は一時的に赤みが発生し不自然な色合いが持続してしまうことがあります。基本的には肌色に変化しますが、人によっては白い線の状態で落ち着くことがあります。いずれの状態でもあからさまに不自然なものではありません。
これらのリスクや問題点というのは時間の経過で解消しますのであまり心配する必要はありません。
修正手術が必要なリスク
時間をかけて様子を見ていても改善しない問題があります。その場合、修正手術が必要となることも理解しておく必要があります。修正手術の時期についてですが、術後早期に修正する必要がある場合と、数ヶ月後でなければ修正が難しい場合があります。
過矯正
過矯正(過剰に瞼が開いてしまう状態)は待てばそのうちに改善するということはありません。基本的には瞼板との固定位置を修正手術によって修復させることが必要です。
効果が少ない・無い
せっかく受けた挙筋前転法ですが、何かしらの理由で想定していた効果を得られないことがあります。その理由は、固定していた糸の緩みや固定位置のズレなどによるものです。
左右差
腫れによる左右差であれば、腫れが落ち着けば改善しますが、瞼板と眼窩隔膜の固定のズレなどによるものであれば修正手術が必要となります。
目が閉じない
これも過矯正と同じです。時間をかけて待つよりも修正手術で瞼板との固定位置を再設定する必要があります。
挙筋前転法のダウンタイム
ダウンタイムとは”日常生活への制限”のことを言います。挙筋前転法は瞼を切開するため強い腫れや内出血を引き起こします。多くの方はその期間、外に出ることを躊躇するでしょう。その期間をダウンタイムとお考えください。
医師の言うダウンタイムとは治療上必要とされる安静の期間のことを説明している場合も多いので注意が必要です。
術直後よりも当日の夜間から翌日にかけて強い腫れが出現します。腫れのピークは2、3日程度でその後徐々に改善していきます。内出血は翌日に出現し、4、5日程度で消失していきます。
黒い淵のメガネを利用することで腫れはかなりごまかすことができます。
術後の腫れは誰でも起こることですが、術後のケア一つで早く引かせることもできます。挙筋前転法の腫れは手術による強い炎症反応です。炎症反応を早く鎮めるには冷やすことと患部を軽く圧迫することです。術後1、2日は圧迫と軽めのクーリングを行いましょう。
挙筋前転法を受ける上での注意
挙筋前転法は医科向けの教科書に載っているし、一定の経験があれば誰でも導入できる手術。しかし、そこに大きな落とし穴がある。一部の美容外科医は適当な経験で教科書を読んで実践しているところも少なくない。特に大手美容外科なんかはろくな経験もない医者が指導医として君臨し、そんな技術のない医者から指導された医師もまた低い医療レベルでの技術が表面上正当な治療として挙筋前転法を実施している。しかし、患者からすれば「眼瞼下垂の手術=できる医師」として勘違いしても仕方ないのが現在の状況である。 また、信州大学の松尾教授が考案したからと言って、信州大学卒業の医師が同じように訓練を受けた訳ではない。愚かな医師のイメージ戦略に騙されるほど愚かなことはないのである。
挙筋前転法には匠の技術が大きく盛り込まれている!!
同じ挙筋前転法という術式であってもそれをおこなう医師で結果は大きく違うということを知ってほしい。眼瞼下垂の手術は教科書通りに実施すればどんな医者でも一定の成果を上げ、結果を出すことはできる。しかし、技術の高い医師と低い医師とでは仕上がりの自然さ、効果の持続、腫れなどのダウンタイムの短さに大きな差が生まれる。そこに匠の技の差が極端に出るもの。
例えるなら美容師さんの技術ひとつで一見同じようなカットに見えても、スタイリングの持続や髪の毛質感、傷み方が大きく変わってくるのと同じこと。髪なら伸びるまでまって美容師を変えれば済むが、美容外科ではそうはいかない。眼瞼下垂の手術を受けるには本当の名医を探しそこで受けることが重要なのである。
さまざまなご質問
眼瞼下垂の手術「挙筋前転法」に関するさまざまな疑問や質問にお答えします。
これから眼瞼下垂の診察や手術を受けようと考えている方はぜひ参考になさって下さい。
- 挙筋前転法の手術の傷跡は目立ちますか?
- 傷跡ですが切開する場所は二重瞼のライン上ですので目立つことはありません。目を開けている状態だと傷はわかりません。
- 挙筋前転法は再発することは無いんですか?
- 挙筋前転法の場合、中の固定の糸が緩んでしまったり取れてしまうと言うことはありませんので元に戻ってしまったり、などの理由で眼瞼下垂が再発すると言うことはありません。しかし、加齢よる変化というのは別です。誰でも年齢を重ねれば手術の有無に関わらず、瞼のたるみは出現します。眼瞼下垂の手術を受ければその時点でたるみのない状態にリセットできますが、そこから少しずつたるみは出現するということはご理解ください。
- 眼科、形成外科、美容外科。受けるならどこですか?
- 基本的には、眼科での眼瞼下垂の手術は「挙筋短縮法」、形成外科・美容外科では「挙筋前転法」が多いです。なので事前にクリニックに問い合わせをして主な術式について確認することをお勧めします。